まるっとまったりまろやかに

ゲームの感想、考察、実況プレイ動画のこと。日記も。

プラスチックヘンテコカメラ

manmaru.hatenablog.jp

2月初旬に動物園に行った。そこはまぁ広くて動物いっぱいいて自然がモリモリで最高だったと前にブログに書いた。で、その時に持っていったカメラがコレだ。

動物園に行った理由の一つ、ヘンテコなカメラで写真を撮ること。

あなたはエルサルバドルに行ったことはあるか。火星はどうか。生きててまだ行ったことのない場所は沢山あるよな。

ではハードオフに行ったことがあるか。オイラはなかった。火星もハードオフも未知の場所だ。個人個人の未体験の事象は日常にも山ほどある。今年のオイラのテーマは、そういう日常の未体験に挑戦すること。だもんで1月某日にハードオフに向かった。

 

電車と徒歩で向かい、たどり着いたハードオフ。階層でキレイな中古/ジャンク品を分けて販売している店舗であった。キレイな品々が並んだフロアの奥から、カホンのリズムが聞こえてくる。

気にはなったがジャンクコーナーへ向かう。ガラクタを眺めるのがハードオフの作法と聞いていたので。これがガラクタなのかと思うもの、これはガラクタですよねと思うもの、色々ある。

面白いのは見た目がそれっぽければ同じコーナーに置かれていること。カメラのジャンク品はそれぞれ「ストロボ」「デジタルカメラ」などと書かれた箱に入れられているが、フィルムカメラのカタマリの中に、すみっコぐらしのイラストが書いてある可愛らしい商品を見つけた。カメラの形はしているが、シャッターのようなスイッチを入れると、涼しい風が上部からふぁ~と流れてくる。ついでに光る。

これは…ハンディファンだ!首から下げるタイプの、手ぶらでそよ風の恩恵に肖れる、アレだ。カメラじゃないのにカメラのコーナーに置いてある!それに気付き、一人でニヤニヤしてしまった。

 

もっと場違いの商品が置かれているのではと、カタマリをまさぐっていると。ストロボと書かれた箱の中に、直方体の、レンズがついている物体を見つけた。

ストロボにレンズなんかつくのか?じろじろと眺めると、どうやらこれはカメラらしい。フラッシュがついていて、フィルムを入れる場所もあるから。ただし見たことのない形のフィルムだ、一時期流行ったハリネズミ?だっけ?あんな形に似ているような気がした。

その場で検索し、幾つかのことが分かった。まずこれは110フィルムカメラの一つであること*1。小さいフィルムを使用できることから「ポケットカメラ」と呼ばれていたこと。しかし今では本体もフィルムも殆どが生産終了しており、このカメラは1985年頃に登場したらしいこと*2

そしてフィルムは、今でもどこかで買うことが出来るということ。

オイラはカメラについて全くの素人だ。せいぜいご飯と道端の花をスマホで撮るくらい。カメラでいい写真を撮ることにも、いいカメラにも興味がない。

しかしこのヘンテコな形のカメラは、そもそも写真が撮れるのか?オイラよりも年老いていて、全身プラスチックの、300円のジャンクとして売られたコレが、もしまだ写真を撮れたら面白い。浪漫だ。

これと同じようなタイプのカメラをもう2台見つけ、ハードオフで初めてのお買い物をした。その後Amazonで110フィルムを送料込みで2000円で買った。送料は1000円かかったが、転売されているものと比べると良心的な価格らしい。110に限らず、今はフィルムの生産が大変らしい。手に入っただけラッキーと思うことにする。

 

動物園に行く前日、3台のカメラを濡らした布で優しく拭き、丁寧に眺めた。1台目に拭いたカメラには自動巻き取り機能が備わっており、シャッターを切ると自動で巻き上げてくれるらしい。しかし電池を入れる所が液漏れでぐちゃぐちゃになっており、オマケに傾けるとガラガラと音がする。これを使うのは諦めた。見た目は一番好きだったんだが。

2台目は、布で拭くたびに塗装がペリリと剥がれていく。水拭きでこれか。さすがオイラより年寄りだ。3台目と同じ会社のものらしく、構造というか雰囲気がまるで似通っている。ポケモンのサンダースとシャワーズは雰囲気似てるけど、サンダースとブラッキーってなんか違う雰囲気を感じるだろ。それと同じだ。伝わるかなこの話。

結局3台目の、ハードオフで最初に見つけたカメラの状態が一番良さそうなので、これにフィルムを入れて当日持っていくことにした。フィルムの扱いははさっぱり解らなかったが、カメラの中にガポンと入れるだけで良いので楽だった。

1台目と2台目。それぞれ別の会社のカメラっぽい。

動物園ではいろんな動物、植物にシャッターを切った。ポケットカメラと言う割にデカいんだが、縦に長いのでポケットに手を突っ込んでつかみやすい。全身がプラスチックだからか、とてつもなく軽い。フラッシュはハナから諦めているので電池も入れずに持ち運んでいるものあって、スマホの方が若干重いまである。

このカメラは望遠機能がついている。上部のつまみをスライドさせると、レンズが出たり引っ込んだりするのだ。アナログ!でもすごい。シャコシャコスライドさせて撮った。撮りながら「そもそもこれは撮れているのか、シャッターは切れているが何も写ってなかったらウケるな」と思っていた。しかし撮れてなくても良いなと思った。オイラは写真が欲しいわけじゃなく、撮るという行為を面白がっているんだなと理解した。

動物園の真ん中くらい、猿山の辺りで撮ろうとしたが、シャッターが切れなくなった。24枚撮りのフィルムを使い切ってしまったのだ。まだ動物園の真ん中なのに!計画性のなさ!と思いながら、後半はスマホのカメラだけで写真を撮ったり撮らなかったりして楽しんだ。

カメラの名前にもあるtele(望遠)機能。左が望遠モード。

数日後、カメラを持って現像しに出かけた。あまり耳馴染みのないカメラ屋さんに入り、おそるおそる「あの…このカメラのフィルムを現像することは…」と聞いた。

店員さんはあっけらかんと、ハイできますよと応えてくれた。現像に30分くらいかかると聞いたので、店を出て町をぶらついた。110フィルムを現像できる店舗は限られており、ネットで調べた上でこのカメラ屋に来た。来てから分かったのだが、店内にはオイラが通販で買ったフィルムが沢山売られていた。

時間が来たので店に戻る。ネガを見せてくれた。なんと、撮れている。すごい。その時点で満足した。

次はプリントをお願いしようと思ったが、プリント1枚につき100円かかるとのこと。全てプリントすると2400円。現像にすでに1500円使っていることを考えると、なかなかの出費だ。店員さんは、あちらのライトスタンド?の方でネガを眺めて、印刷するものを選ぶことも出来ると教えてくれた。安心。10枚だけ選んで印刷をお願いした。更に20分くらい待ち、無事に印刷された写真を受け取った。デジタルデータにすることも出来るらしいが、更に高額になるので諦めた。

同じ位置から標準と望遠を使って撮った。本当に近くなってる!

ボケてるのは仕方ないとして、ブレがあるし、なにを撮ったのかよく分からないものもある。だから正直「フィルム含めて5000円くらい払ってこれか」とショックを受けた。素人なのでこういう感想になる、カメラが好きな人、すまん。

しかし、ずっと眺めていると、じわじわと感動というか、暖かいものが込み上げてきた。1985年くらいに生まれた、全身プラスチックで、知名度もまるでないこのヘンテコ中年カメラは、今でも写真を撮ることが出来る。そしてオイラは彼と一緒にその体験をすることができた。すごく楽しかった。

自分自身も、自分の体験も、それに伴う自分の感想も、無理に特別なものであると言い張る必要はあまりないと思う。普通なものって、特別でなくてもちょっとヘンテコで面白いから。

使い切ったフィルムと、好きな一枚。

とはいえ、オイラからしたら高い趣味には違いないので、今度はバシャバシャ撮らないようにしよう。半年に一回使い切るくらいで良いな。ではまた。