まるっとまったりまろやかに

ゲームの感想、考察、実況プレイ動画のこと。日記も。

でかいスーツケースを手放した

ジモティーでスーツケースを売った。500円だった。

 

オイラは普段あんまり物を買わない。餅つき機や食洗機が欲しくても、本が欲しくてもとりあえず保留にする。ミニマリストってわけじゃあないけれど、物をあんまりたくさん持ちたくない。自分が管理できる以上の物を持つことにしんどみを感じる。コレクター的な楽しみもあんまり理解できないので、しまう場所が無くて困るくらいなら買わずに別の方法を取る。

そうは言っても生きていれば物は少しずつ増えていく。悩んで悩んで買った本、目を合わせてその場から私を動けなくさせたぬいぐるみ、5kgのお米が入るようにと買ったデカいリュック。最近は最適な文房具を探してノートを買うことも増えた。

今年もいろいろなことに挑戦しようと思い、300円でフィルムカメラを買ったりもした。100均で買った毛糸玉はまだ3つくらいあるし、アイロンビーズもプラの容器にパンパンに詰まっている。どれも触るのが楽しい。

じりじりと嵩が増してきた棚の中の物たち。オイラはそれを見ると、なんとなくストレスを感じる。好きなものに囲まれて幸せ、とはあまり思えず寧ろ「管理できない物を増やすのは性に合わない」「しかしこのままだと新しいものを買う楽しさを捨てることになる」という2つの思いが頭をグルグルと回り、ムカムカしてくるのだった。

最近こんなこともあった。雑貨屋で見つけた可愛らしいゾウのぬいぐるみ。とても良い……この子は家に持って帰ろう、と思い抱きかかえるのだが、「また家に物が増えるぞ」と誰かに囁かれる。この子が家にやってきたらどこに置いてやろう。オイラはこの子の面倒を見てやれるだろうか。そう考えるとイヤでしょうがなくなり、諦めた。こういうことは何度も、ぬいぐるみ以外の別の種類の物でもあった。

 

このままではもうオイラは二度とぬいぐるみを迎えることは出来ないし、物を買った後に起こる楽しさにも触れられない。それは今年の目標でもある「小さな新しいことに挑戦する」もできなくなってくる。

在るから良いと服も買わず、ただボサボサの歯ブラシを交換するだけの日々は、平穏であるがオイラはそれを求めたくはない。由々しき事態だ。

そこで家にあるものを片付け始めた。必要だから買ったはずのものの中で、1年以上触れていないものは片っ端から捨てることにした。本も服もキッチンツールも。大切なぶいぐるみは、人が貰ってくれそうな小さいものは人にあげたりもした(大きいものはオイラが最後まで面倒をみたい)。これで家の棚にも押し入れにも、そして心にも随分と余白ができる。安心して新しいものを受け入れる準備が整うのだ。

 

意気揚々と物と別れていくオイラの前に、ひとつ大きな家財道具?が立ちはだかった。それがあのスーツケースだ。これは人から貰ったもので、いつから家にあるかも覚えていない。いつかオイラが旅行をする時に使おうと思っていたのだが、北海道に旅行に行くときさえもコイツの出番はなかった(5Kgの米が入るリュックで足りた)モンベルのステッカーは貼られているが、別にそういうブランドのものではない。はっきり言ってナゼ我が家に居座り続けたのか、全く分からない。よし、サラバだ。

そう思って市から配られているゴミの分別表を眺めると、スーツケースは粗大ゴミであると書いている。ポーチと同じバッグじゃないか。デカいからか。200円支払って回収日時を決めて、あとは出すだけでいい。実に簡単なんだが、オイラはそれを止めた。思い出したことがあったからだ。

オイラは普段本をあまり買わないと書いた。そのため図書館をよく利用する。その図書館の前には「もらってください・ゆずってください」と地域の人々が不用品の譲渡をお願いする張り紙が何枚も貼ってある。靴だったりスーツだったり、家財道具もあったはずだ。このスーツケース、誰か貰ってくれないだろうか。

jmty.jp

そう思い、初めてジモティーを利用した。地元の人同士で物や人手を譲渡し合うサイトだ。ジモティーに決めたのは ①梱包や発送をする必要がなく②直接受け渡せ③現金で支払われること の3点だ。スーツケースなんかを包んで送るなんて絶対にめんどくさいし、送料が馬鹿にならない。また売った時に手元に残るのは現金なので自由に使える。そして何より、こんなスーツケースを欲しがる人はどんな人なのか、受け取った時どういう反応をするのか気になったからだ。最寄り駅までの電車賃が500円以下なので、金額を500円にしてジモティーに投稿した。

1週間後くらいだろうか。連絡が来た相手とやり取りし、スーツケースを引き渡すことにした。土曜日の13時、駅のモニュメント前で待ち合わせだ。オイラは12時くらいに既に駅構内に入り、近くのカフェでコーヒーを飲んでいた。時間ぴったりにモニュメントの前に着くように店を出て、待ち合わせ場所に向かう。空のスーツケースはガラガラと音を立てている。使ったことがないので分からないが、これは煩い方なのかな。

 

駅には沢山の人、人、人。だが普段より人数が気にならないのは、それらを視界に入れていないからだろうか。モニュメントの前には女性が2人、男性が1人いる。一目で「あ、この人がスーツケースを受け取りに来た人だな」と分かった。別にその人が特別キョロキョロしてたわけじゃないし、オイラが事前に特徴を知っていたわけでもない。でも多分、このスーツケースを欲しがるのはあの人だろうなと感じたのだ。

当たった。挨拶を交わすと、その人が財布を取り出した。オイラはお金を受け取る前に、このスーツケースはここを引っ張るとここが伸びて、鍵はここにあって、ここに傷があるけど丈夫で使えるぞと一通り説明した。メール連絡の時に聞いていたのだが、受取人の方は仕事の出張中にスーツケースが壊れてしまったそうで困っているとのことだった。オイラの説明を聞いた後、その方は小さな財布から500円玉を1枚出して、オイラの両手に置いてくれた。その後、ガラガラとケースを引っ張りながら、オイラの家とは逆方向の電車に乗っていった。

 

これでスーツケースを受け渡した話は終わりだ。すごく面白かった。まず手間を考えると粗大ゴミに出したほうが楽だ。お互いの日程を調整したり、わざわざ空のスーツケースをガラガラと煩く鳴らしながら運んでいく必要はない。それに、オイラはカフェでコーヒーの他にパンを食べたので、往復の電車賃と合わせて1000円も使っている。金銭的にも損してる。

しかし、本当にオイラが手放そうとしているものを人が受け取りたいと名乗り出て、知らない人と日程を調節して、実際に会って受け取ったら帰っていく、そんな密輸の売人みたいなことが出来るなんて面白すぎる。オタクの界隈でグッズ被りを受け渡したりすることはあるのかもしれないが、オイラはそんな経験をすることは絶対ないだろうし。実に貴重な体験をした。

あのスーツケースは別に良いものじゃあない。おそらくあの受取人さんが無事に出張を終えたら、処分して新しいものを買うだろう。でもそれはそれで、使う機会がないオイラが捨てるより、ひと仕事終えて捨てられる方が、なんというか、浮かばれるような気がする。

オイラはSDGsとかには”あんまり”興味がない。マクロな視点で見たら、オイラがスーツケースをどうこうしようが、そんなに変わらないと思う。でももっと狭い視点で、オイラの所に偶然やって来たスーツケースの一生と、それをどうにかするオイラのことを考えた時に、ただ捨てるよりはこっちのほうがちょっとだけ楽しいだろうなと思う。

まだジモティーにひとつ出しています。

ただまぁ、このビジネスバッグが誰の貰い手もなかった場合は、オイラはあっさり捨てるんだけどな。誰かもらってやってくれ。0円だから。

jmty.jp