まるっとまったりまろやかに

ゲームの感想、考察、実況プレイ動画のこと。日記も。

本を寄贈した日の日記

本を読み終えたので、それを持って図書館に寄贈しに行った。

北海道へ旅行に行った時「地方の出版社の本を買うと面白いよ」と言われ、買ってきた本だ。札幌に生息するカラスにスポットを当て、カラスの生態について丁寧に、優しく解説している本。カラスの挿絵もすごく良い。つまらなくても面白くても、買った本は大体寄贈している。ボロボロならそのまま捨てる。

寄贈し終えて、喫茶店でひとやすみすることに。水出しコーヒーがもう出ていたので注文する。借りてきた本を眺めたり、ノートに日記を書いて過ごす。3つ隣のテーブルの老人は足が少し悪いようだった。いざ歩くとスタスタと行くんだが…ONOFFがうまくいかないみたいで、注文して席に着くだけでもなかなか大変そうだった。

ぼーっとしていたら、ふと先日聞いたラジオのことを思い出した。

作家さんが読者からの手紙を読むコーナー。図書館ではまだ作家さんの本が置いていなかったとの一文に対して作家さんは「買えよ」と突っ込んでいたな。図書館という記憶のつながりで思い出せたんだろう。

SNSで度々「図書館で借りましたとの報告はあんまり嬉しくないです」と、作家さんや編集さんが発言しているのを見かけた。どれだけ読まれてもお金が入っていかないもんなぁ。そりゃあ嬉しくないだろう。特に今は本が売れないらしいし。

そのことを気にして、私は図書館を使わないようにした時期がある。私がいくら本を楽しんでも作家さんに一円も入らないのは申し訳ない、しかし本を買うほどの金はないので、本は読まずに過ごそう、と思っていた時期が。

友人に自分の考えを伝えると「こうこうこういう理由で図書館で本を借りるのは当然の権利だから一切気にしなくて良いぞ」と言ってくれた。友人は社会学を学んでおり、おそらくその観点からも(そして友人であるという理由からも)私の行為を正当化してくれたのだと思う。おかげで今日も、寄贈したついでに何冊か本を借りることが出来た。

だかしかし、嘆いていた作家さんや編集さんの気持ちも分かるのだ。いや作家ではないので完全には分からないのだが。誰かにとって当然の権利があろうがなんだろうが、生きるためのお金が入らないのは困るだろ。うーん。

買って読んで欲しい作家もいれば、借りてもいいと思う読者もいるのは普通のことだ。互いに立場が違うのだから、その立場でしか論ずることしか出来ない。と思う。私がいくら頭を捻ろうが他人の意見を聞こうが、それを踏まえた上での自分の心と体でしか、モノを語れないだろう。私は私以外ではないから。

 

そういえば、先日SNSで「好きな本読んで好きに影響受けたら良いじゃ~ん」などと発言をしていたら、ある作家さんに直接説教を受けたというか、釘を刺されたのだ。引用RTっぽいこともされた上で。”本は娯楽として読んでほしい。小説は嘘の話なんだから影響を受けすぎるのは困る”と。”出版した小説の影響で作者やその家族、出版社にまで被害が及ぶことがある”と。それは知らなかったので謝った。ただその方にもお伝えしたが、私はモリッモリに影響受けて生きている変人なので、それを聞いても自分の考えは変わらないとも答えた。

そのことを喫茶店でコーヒーを飲むまで忘れていたのだが。釘を刺された話と、図書館の本を読まないで欲しいという話も、作者と読者という立場?による考えの違いが関係するものなのかな。と思った。

図書館で自分の本を沢山読んで欲しいと思う作家もいるだろうし、悪影響だろうが構わないと思う作家もいるだろう。それは個人によって違う。私を励ましてくれた友人や、釘を差した作家さんが正しいかどうかは、分からない。ただただ自分の主張があって、それを発しただけのことだろう。その言葉に聞く側の(あるいは別の誰かの)立場を慮る(で合ってるのか?)考えはない。別に無くてもいいと思う。言いたいことを言えば良い。私も聞き入れたければ聞き入れる。

 

コーヒーを飲み干したので、荷物をまとめて店を出る準備。気がつくと、3つ隣のテーブルにいた老人がいなくなっていた。テーブルには空のコップやサラダカップのゴミがそのまま置かれていた。あっそういえばあの老人、食べ終えたらすぐ店から出ていったな。ここは客に片付けさせるシステムなんだが、爺さんったら忘れていったのか。

いや、もしかしたら、片付けられなかったのかもしれない。あの老人は足が悪い。食べ終わった自分の盆を、数メートル先のダストボックスの所まで運ぶことを諦めてしまったのかもしれない。横断歩道まで行かず、その数メートル手前で横断しようとする老人のように。足が悪いとその数メートルが辛いのだ。

店員さんはこのゴミをどう思うのだろうな、と考えて、席を立つついでに爺さんのゴミも片付けた。店を後にし、魚を買って帰った。鯖が好きだ。

寄贈した本と借りてきた本を見ながらお別れです、さようなら。