wander around holding a soft oval

日記を書いてます。人からはエッセイだとも言われます。

コロナになった時の日記

はじめに

 5月から今日までの間に2回、体を壊した。うち1回はコロナだ。どちらも体が痛くて寝ていられないほどだった。GWが明けて今日に至るまで、それ以外特に大きな出来事がなかったので、コロナになった時のことと、思ったことを書こう。今はもう元気満々!とまではいかないが、こうやってブログを書けるくらいには回復した。ひどい時はPCの前に座ってられなかったから。では書く。少しフィクションを混ぜとくぞ、特定怖いからな。

 

-1日目

 夜頃から体調が悪くなり始めた。すごいスピードで全身の筋肉が痛みだす。自分の場合は風邪をひくと節々にくるのだが、今回は「この痛み、きたな」というより「もう来てんじゃん、玄関まで入ってきてるわこれ」という感じだった。

 この日は土曜。明日の日曜に空いている病院はあるか探すため、横浜市が運営しているサイトで調べることにした。私の家の近くには3件あった。うち1つは小児科だった。調べている時点で大分具合が悪かったな。とにかく身体が痛い。こういう時は「節々」と書くのだろうけれど、それだと節しか痛くなさそうだろ、違うんだ。股関節と太ももの前と肩と背中と腰と尻が痛いのでわざわざ”身体”と書いている。こういう時は早く寝るに限るんだが、横になっても縦になっても痛いので、椅子に座ってマッサージをし続けた。熱は36.9。

 それぞれの病院のHPには書いていない情報が、市のポータルサイトにはやたら詳しく載っている。この曜日は1時間早く受付するだとか、この日は午後の診察が終わる1時間前までしか受付してないとか。本当なんだろうか。行くと決めた病院は、電話予約を朝9時から受け付けているとのこと。HPには10時からと書いてあるが、果たして。起きられるか不安で、夜中にアラームをかけた。ヒマなのでTwitterを眺めていたら、リプ欄にオススメツイートが表示されるように仕様が変更されていた。こんな時でも私はなにかの宣伝を受けている。私に価値があると思われているのか。こんなに股関節が痛いのに。

 

0日目

 朝の7時起床。結局どこかで寝落ちしたらしい。9時までゆっくり支度をし、9時と同時に病院へTEL。すんなり予約が取れた。市のポータルサイトすげー。外は雨。本当は歩いて病院に行ければ良いのだが、そうは体調が許してくれない。バスに乗った。他に乗っている人たちに申し訳ない。すみっこでじっとしていた。咳が出なくてよかった。

 病院の前に来た。事前連絡の通り、エレベーター前に着いたことを病院に電話で知らせる。5分後に看護師さんが迎えに降りてきてくれた。多分、コロナの疑いがある人間にスンナリ院内に入ってほしくないんだと思う。ちゃんとしてる。三階に上がり、外の非常階段まで案内される。薄緑色の丸椅子がぽつりと置かれていた。ここがコロナ外来の診察”席”のようだ。電話で事前に連絡を受けていたので、あまり驚きはしなかった。むしろ気が楽だ。換気100%だもん。外の風に当たりながら待てるので気分が良いし。

 看護師の方々もお医者さんも、丁寧で朗らかな人たちだった。看護師の一人が、よく通うスーパーのおばちゃんくらいフランクに話しかけてくれて和んだ。そしてその人がインフルの検査もしてくれたのだが、今までで一番鼻が痛くなかった。やるなぁ。インフルの検査結果はマイナス。コロナの検査結果は今日の夕方頃に出るらしく、風邪用の処方箋をもらって家に帰ることになった。後に来た患者さんは同じく非常階段で待たされた。私よりひとつ上の踊り場で座らされていたのだが、お医者さんはその人のところへ階段を駆け上がって行っていた。それが私はなんだか嬉しかった。この病院好きだなぁ。

 フラフラのまま、ドラッグストアで色々買う。Mastodonのフォロワーさんから教えていただいたものを揃えた。そして美味しそうなクッキーも買った(オススメはされていないがとにかく美味しそうだったので)。家に変えるなり1枚食べた、案の定美味しかった。それから夜まで、もらった薬を飲んで安静にしていた。熱が全然引かない。もらった葛根湯じゃダメか、ダメだろうな。もう1つ別の、強めの薬も飲んで連絡を待つ。飲んだ辺りで汗がダラダラと出てきた。水を飲むが、飲んだ分すべて汗になっているようだ。私が飲んでいる水は浄水器を通して出来た旨い水だ、それが私の体を通って汚い汗に変わって出てきている。汗製造機だ。だんだんと熱が下がってきたが、これが汗のおかげなのか、強めの薬の効果なのかは分からない。

 18時頃に病院から電話が。結果はプラス。ですよねー。「風邪の延長みたいなものですから、あまり怖がらずに、とにかく安静にしていてください」とのこと。午前中の病院での対応から考えるに、おそらく私を励ますために風邪の延長という言葉を使ってくれているのだと思う。ありがとう。まぁ明らかに風邪より重いダメージを受けているのだが。熱は38.3。

 

1日~3日目

 身体が痛い。熱は38.6になったり、薬と汗で36.4に下がったかと思えばまた戻ったり。久々の高熱でドキドキする。コロナ用の薬をもらっていなかったことを後悔していた。高熱が出る度に、3月に北海道へ旅行に行ったときのことをブツブツ呟いた。SNSの向こう側に対してではなくて、布団に寝ている自分にしか届かない声で、言い聞かせるように呟く。「はこだての、朝に海鮮丼たべたな。ちょっと、あったかいマグロ、うまかったな。さっぽろで、雪印、パーラーのパフェがさ、美味しかったよな。」……なんだか走馬灯のようで書いていて笑ってしまったが、その時の私は少し違う思いで――未来のために、自分を生かすために、楽しいことを呟いてやっていた。またいきたいよな、と。

 ゲームを長くしていられないので、とにかく本を読んだ。村上春樹さんの「雑文集」を読み切った。「若い読者のための短編小説案内」という作品で初めて村上春樹さんの文に触れ、語り方、書き方、ものの見方に感動し、別のも読んでみようと思ってエッセイを借りてきたのだ。427ページもある。ふだんの私は児童書ばかり読んでいるんだが、読めるだろうか……と思いながら借りたのだが、読み切れてしまった。嬉しい。とても面白いな!

 あえてとても悪く言うなら、回りくどくてハッキリしない文章だ。しかし私はそのハッキリしない所が好きだ。丁寧というか、真摯だと思う。モノへの光の当て方も好きだし、何て表現すれば良いのかな……階段を登るように1段ずつ、いや違うな、RPGのような文章だなと思った。一見すると回り道をしているようだが、その行動には本人にしか分からない価値がある、それは冒険で得られる報酬とも違う、目に見えないなにかだ。それを一つ一つ集めながら最後まで旅をしていくような……AメロBメロがあってこそのサビのような……難しいな、もっと読んだら伝えられるんだろうか。

 動画もそれなりに見た、というか流していた。最初はよゐこさんの◯◯生活を流して、好きな人のラジオを流して、自分の配信のアーカイブを流して……こう書いてみたら、以前に見たことがあるものを何度も流しているな。実況プレイ動画を投稿して12年ほど活動しているが、じつは普段から人の動画はあまり見ない。面白くないわけじゃないが、好きじゃない。Eテレとかの方が好きだな。よゐこさんの動画、いつも同じところで笑ってしまう。有野さんの髪型の方向性が気になる。

 職場の事務の方からLINEが来た。ご飯は食べているか、なにか持っていこうかとのこと。厚意だけ受け取った。いつも庭で育てた野菜をもらっているが、今回ばかりはうつしたら大変だし、食欲自体はあったから。うどん、カツ丼、なんでも食べた。アイスも1日1本ずつ、ポカリと水を2リットル飲んだ。こんなに自分がモリモリゴクゴクやれているのは、味覚障害が出ていないのと喉が平気だからだろう。ひたすらに身体が痛いだけだからな。ただ買ってきたカツ丼がしょっぱく感じて、ご飯を少しだけ残したときがあったな。カツを全部食べるのが意地汚いなと自分でも思うんだが、”弁当がしょっぱくて食べられない"というのはあんまり経験がなかったので不思議だった。家で作っていたご飯が尽く薄味だったからかもしれない。

 

4日~5日目

 熱は大分下がったが身体は痛い。この辺りから胸に違和感を感じ始める。ひょっとして次は呼吸器のほうに影響が出始めたのか……私はぜんそく持ちだったから、これはいよいよ死ぬかもしれんな……と怖くなる。胸が痛むのだ。しかし、喉がひゅーひゅー鳴らず息苦しくもないのに胸が痛むのって少し変じゃないか。少なくとも呼吸器の異常ではない。ひょっとしてと思い、胸と脇をもみまくったら違和感が取れた。どうやら股関節の他に胸筋周りも痛みだしたようだった。そういえば整体師さんから「胸の筋肉が固いから猫背になりやすいですよ」と言われてたな。一人でわーっとなって一人で解決した。

 夕方くらいから動画に関係する作業を進める。少しだけだ、1時間も座ってられないからな。普段はとにかく収録が最優先なので、後回しにしていた細かい作業を進められた。今後の投稿予定をカレンダーで確認すると、ポケモン盾実況の動画のストックが7月に尽きることが分かった。もう6月の中旬だ、いつ撮ろう……もう6月の中旬なのか。先月正月だったのに。

 夜、コロナ1日目のことを思い出す。医者に陽性だと伝えられるまで、私はコロナに罹っていたがコロナと診断されたわけではなかった。病院へはバスで向かったし、帰りはドラッグストアに寄ったな。ひょっとするとこれまでも、私のような状態の人とすれ違っていたのかもしれんなぁと、ぼんやり思った。陽性かどうかは分からない、でも無自覚というわけでもない。健常者と罹患者の間の時間を、申し訳ないと思いながら過ごす、そんな人達と、どこかですれ違っていたのかもしれない。

 

6日目

 いよいよ外に出る。というか出なければいけない。本を返しに行きたいし、家に食べ物が、特に肉がもうないから。熱はすっかり下がり、胸や股関節などの痛みも取れた。電車に乗ると、若いサラリーマン二人がマスクを外しておしゃべりしていた。増えたな、マスク外す人。私は一生のうちにまたコロナにかかるだろう。そして私と誰かの間でコロナを移しあったりするだろう。お互い様だ。しかしだな、マスクはしておいた方が良いぞ。そんな至近距離で話すならさ。コロナると辛いぜ。……と思いながら、二人をじっと見ていた。私のほうが先に降りた。

 すく疲れてしまうので、あちこちのベンチで休みながら用事を済ませていく。これは重い風邪とはやっぱり違うな。症状が落ち着いてからも身体がしんどい。ただ怠いわけじゃない、頭から爪先までの身体の内側が軽いやけどになったような、ヒリヒリする感覚があるのだ。これがコロナか。まぁただ単に、私が痛がりなだけかもしれん。

 夕方にも外出。土手の方を歩いてスーパーへ。斜面に生えたセイタカアワダチソウなどがキレイに刈り取られ、刈られた草が新たな茎や葉を伸ばし、10cmほどの高さになっている。この6日間の時の流れを感じた。ずいぶんあっという間に過ぎていったのだな、6日もさ。いや、こんな思いはすぐ過ぎてくれたほうが良いに決まってるか。紫陽花が大輪の花、いやガクを咲かせていた。

 帰りに手に取った雑誌に、作家さんの連載記事が載っていた。ちょうどこの人もコロナになったことを、日にちごとに日記調でしたためていた。2行目くらいに「コロナから逃げ切れなかった」と書いてあった。なるほど、この人は今まで自分の力で逃げ続けてきたのか。今までは逃げていたが、とうとう捕まったと、そういうことか。

 私は……逃げていたとも、捕まったとも思っていない。罹っていない状態があって、それが罹った状態になった、としか捉えられない。確かに自分で努力して為る確率を下げることは出来るだろうが、結局は運だと、私は思う。人々は逃げ切れずに死んだのではない、不条理に罹って死んだのだ。どこへ逃げのびれるのだろうか、コロナのなかった過去の世界にだろうか。マザー2のギーグみたいだな、過去に逃げるのって。

 コロナになる前からも、そして今も、死は隣にあるという観念?が私の中にある。この雑誌を読んで改めて感じた。反面教師と言ったら聞こえが悪いか。自分の足でここに立てていると、やはり私には思えない。

 

今日

 夏日だ。天気がとにかく良い。今はこうやってブログの下書きを、休憩をはさみつつ書いている。先程7日ぶりに、プランターのパセリに水をやった。思ったよりずっと元気そうで、モリモリに生えている。小さな森になっているな。これはおそらく、私が自宅にいる間に何度か降った雨のおかげだろう。お前もたまたま生きていたか。

 身体の内側のヒリつきは、まだある。エアコンのせいなのか部屋が乾燥し、鼻の調子がコロナ時よりも悪い。ツーンとする。Mastodonで勧めてもらった点眼薬を、今日初めて使った。効果は未知数。来週から仕事は再開するが、上司と相談し少しゆるくしてもらった。とてもじゃないがこの体力で、先週のように働けない。

 ブログを書いては休憩し、洗濯を干しては休憩している。とにかく疲れやすい。コロナの影響で身体が弱くなったのか、休んで体力が落ちたからなのか分からない。はっきりしてほしいところだ。頭の上に※状態:ころな※とか※筋力低下※とか表示されてほしい。6日間社会から半ば切り離された生活をしていたが、6日ではそこまでの未来は来ていなかった。

 期間中、自分は運が良かったな~と何度も思っていた。今も思っているぞ。咳が3日間止まらなかった人、40度以上の熱が出た人、亡くなった人、いろんな人がいた中で、私は身体の痛みと熱だけで済んだし、全身ヒリつくが、一応生きているから。結局コロナの特効薬というものは貰わなかったな、貰っていたらこのヒリつきは無かったんだろうか。

 書くこともなくなってきたので、ここらで終わりにする。最後になるが、私がコロナに罹ったことを聞いて、温かい言葉をかけてくれた人、そして冷たい言葉をぶつけなかった人、ありがとね。

 

明日

 Yシャツの首に洗剤塗ってから洗濯をして、うどんを食べる。ハナマサマッサマンカレーが美味しかったから元気だったら買いに行く。

掃除してたら出てきた薬の空袋と紫陽花を見てお別れです。さようなら。