wander around holding a soft oval

日記を書いてます。人からはエッセイだとも言われます。

夏の陣

「天下泰平」「ツルツル食感!」

図書館に本を返しに出かける。あとついでに、自分で買って読み終えた本を寄贈しに。

図書館は少し混んでいた。児童書のコーナーで子供用のイスに座った大人が、楽しそうに本を読んでいた。オイラもムーミンの3巻を借りようかと悩んだが、帰りにスーパーに寄って野菜をカバンに詰め込むことを考え、やめておくことにした。トマトが潰れて本についたら大変だ。

図書館をあとにしてスーパーへ寄る途中、献血のお願いをしている人を見かけた。ここらへんには珍しく献血カーがやってきていた。いや、オイラが初めて見かけただけで、時々はここに来ているのかもしれない。献血カーの方をじっと見ると、待機している人があまりいなかった。「ラッキー」と思って献血して行くことにした。

献血カーのそばに立てたテント屋根の下で受付。暑い。なんだかモワッとする。この前の台風のせいかもしれない。少し待ってオイラの番の受付。献血のアプリを入れているのでカードの忘れもなく、すぐに手続きは終わった。スキンヘッドの人が対応してくれた。その人の隣りにいる人は先輩のようで、スキンヘッドさんに指示を出すときだけ真顔になっていて、なんだかちょっと怖かった。

受付が終わって献血カーの中へ。お医者さんからの問診があり、すぐに別の席で採血。今はクリップみたいなので指先をパチンとするだけで、ぜんぜん痛くなくて嬉しい。オイラは注射が苦手で苦手で。あと血を見るのも苦手だし痛みにも弱い。精神的に献血に向いてない。

献血が始まる。狭い車内のベッドに横になる。冷房が効いているだけでもありがたい。もしもこれが別の国なら、炎天下の中で献血することもあるのかもなーと想像すると、日本に生まれてよかったかもしれないなって思う。腕に針が刺さる時は顔を腕からおもいっきり背けて、目をぎゅっと瞑る。刺された後も、決して自分の腕の方は見ない。怖いからだ。怖い目に遭うと、オイラは尻がひんやりする。献血中ずっと尻が寒かった。

 

「あっという間に献血終わりました!」と看護師さんに言われ、終了。オイラの前に受付をした人も、その前の人もまだ終わっていないのに、オイラの400ml献血は終わった。そう、オイラは精神的には向いてないが、肉体的にはめちゃめちゃ献血に向いている。異様に早く終わるのだ。毎回看護師さんに「もう終わったの!?」みたいな顔をされる。自分でも怖くなり、オイラの体がおかしいのかと聞いたことがあるんだが、別にそういうわけでもないらしい。ただただ献血が速い。それがオイラの長所です。貴社に入れてください。血は抜かないでください。

献血が終わってもいきなり激しい運動はせず、外に出て15分くらい休憩を取る。係の人にジュースをいただき、それも飲む。最初に受け付けた時にもスポーツドリンクを頂いた。献血をする時にもらうスポドリは、なぜかいつもキリンのラブスポーツだ。どうしてだろう。「ラブ」って入ってるからかな。献血周りではよく「ラブラッド」という言葉を使うから、それ繋がりかも。

休憩が終わったので立ち去ろうとすると、プレゼントを頂いた。今回はうどんとタレのセットである。「うどん夏の陣」だそうだ、いい名前!

 

家に帰ってから茹で、タレと合わせて食べることにした。釜玉うどんにして食べる時、オイラは白身と黄身を分けておく。丼に白身を入れて溶きほぐし、茹で上がりザルにあけたうどんを丼に放り込み、勢いよく混ぜる。すると白身に少しだけ火が通り、ふわっとした食感になる。これが好きだ。黄身は最後にトッピングして食べる。オイラは生卵の白身がどうにも苦手なので、こういう食べ方で食べている。

美味しい。トッピングは無し。あんまり拘りすぎると、せっかくもらったタレの意味がなくなる。こういうのはシンプルに食べたい。外の暑さから解放されてうどんを啜れる、夏の好きなところだ。

 

ここまで文を書いていてふと、自分が先程書いた”「ラッキー」と思って献血して行くことにした。”という文が気になった。オイラは献血をする時に、もし混んでいたとしたら行かないのだろうか。答えは「わからない」だ。赤十字の人、ごめんなさい。

オイラは割と献血に行く方である。だからといって次の献血可能日が来たら即献血センターに足を運んで…というような、熱心なタイプではない。献血をすると今回のうどんのようなプレゼントを頂けるのだが、それ目当てで行くこともない(貰えるものはありがたく頂戴するが)。

決して善の心でもって献血に協力しているのではない。そういうことが出来るやつは尊敬する。オイラの場合はなんというか、うーん、普通のことなのだ。オイラにとって献血は、出来るのでする。オイラの血で誰かを助けてやるぞとかは全く考えたことがない。

眼の前でハンカチを落とした人がいたら、オイラは拾う。それは「あっハンカチ落とした!困るだろうから拾おう」とかは全く考えていない。落としたから拾ってやる。理由がないんだよな。

時々日本赤十字からお手紙を頂戴する。内容は、献血してくれてありがとう、こういう人が助かったよ、これからもよろしくね、という感じだ。でもオイラは人が助かろうが、感謝されようが、どうでもいいのだ。協力できるからする。出来ないやつはしなくていいと思う。義務じゃないんだから。痛いしさ、針。オイラ注射だいっきらいだもん。

献血をすることが善いことって捉えられると「献血できないやつは善くない」っていう考えが生まれちゃうだろ。他人に対しても自分に対しても。そっちの方が問題だ。そんな悲しい考えを持つ人間が生まれるくらいなら、献血なんて善いことでも全然なくって、うどんあげるから受けてくれ~/受けたらもらった~くらいの、ゆるい感じで良いんじゃないかなって思うことはある。

でもまぁ、善そのものがなくなれとは思わない。それはそれで大切にしないと、生きていくための……北極星というのかな、それがないと人間として生きていけないだろうから。

なんか難しい話になってきたから終わる。うどんはまだ1玉残っている。むふふ。