12月12日は漢字の日だ。そしてオイラの銀行口座に12万3725円が戻ってきた日でもある。この日は記念日にしたい。あわてんぼうの日として。
11月29日
スマホにSMS。普段は面倒くさいので、誰からの連絡も無視しているが、ちょうど信号待ちのタイミングで通知が来たので、パッと開いた。
”【三井住友カードからの大切なお知らせ】ご利用代金のお支払いに関するご案内です。詳細は[URL]でご確認ください。”
おっ詐欺か?でも詐欺ならもう少し煽るような文面だし、URLも普段から見なれたやつだ。けれど間違いがあってはいけない。信号を渡って、洋菓子屋の脇道に入って立ち止まる。貼られているリンクではなく、スマホのブックマークから公式サイトに向かい、マイページでお知らせを確認した。
11月25日に行われるはずのクレジットカードの引き落しが、うまくいかなかったらしい。オイラが使っているクレカ用の銀行口座には約12万円を入れておいたんだが、数十円ほど足りなかったようだった。確かに今月は上着を買ったり旅行にも行ったしで、かなり金を使ってしまったから…普段の額の2倍も請求されてしまった。入れておいたお金では足りなかったのだ。
クレカの会社には悪いことをしたなと思ったが、ページ下部の方に「滞納した請求金を支払うには」と書かれたリンクを見つけた。そこを読むと、翌月の12月5日になったら再び引き落としを行うということ。その他に、カード会社が指定した口座に直接請求金額を振り込むことも出来ると書かれていた。
12月5日まで待っていれば、再び引き落とされるわけだ。だったら何もせず待っていてもいい。だがオイラはそこで余計な気を回してしまった。そう、指定の口座に直接振り込むことにしたのだ。滞納というのは気持ちの良いもんじゃないし、カード会社とオイラのお互いの関係性を良い状態に保っておきたかったし。
タイミングの良いことに、洋菓子屋の向かいにはオイラの給料が振り込まれる方の銀行Aの支店があった。サイトのページに書かれた口座へちゃっちゃと払込み、すぐに銀行を出た。雲一つ無い、よく晴れた日だったのを覚えている。
12月8日
暇で暇で、開いたSNSのページを閉じてはまた開いてをしていた。気まぐれで、ブックマークしていた銀行Bのマイページを開いたら、最近の明細が出てきた。12月5日に12万3725円の引き落とし。あーこれクレカの支払いな、はいはえっ?
おかしい。オイラは29日にカード会社に直接振り込んでいる。しかし5日にも引き落としがされている。これ、ひょっとしてオイラが振り込んでないことになっている?
その時ブアッと、自分がやらかしたことに気がついた。29日に振り込んだのは間違いない、明細も取ってある。しかし、オイラがカード会社への振り込みに使用した銀行は、引き落としで使っている銀行Bではなく、給料が振り込まれる銀行Aだ。
つまり、オイラではない誰かからカード会社へ、約12万円が振りこんだことになっている…な!?どうしよう。
慌てて三井住友カードのページへ行き、問い合わせを試みる。
がしかし、お客様サポートのページからは問い合わせの電話番号が見つからない。ページからは「困った時は・よくある質問・ご要件から探す・メールフォーム」の4つしか選べないのだ。うち3つは大体同じようなもので、見てみたが解決しそうにない。メールフォームからは「お客さま情報を確認したうえでのご案内ができない」と書いてあり、オイラが誤って支払ったお金はどうなるかという個人的な質問ができない。
AIチャット開始のボタンを見つけたので、それをタッチ。オイラが誤って支払ったお金のことを聞こうと試みるが、Aiチャットが開示してくれる選択肢の中にはオイラが聞きたいことはなく。文字を打って聞いてみても調べてくれそうにない。おそらくこれも、個人的なことを聞くことが出来ないのか。
困った。お客様サポートページを開いたのに、何にも解決できない。おろおろしていたら、友人からLINEが来た。そうだ!人に聞こう!と、友人に事の顛末を説明。するとすぐに、AIではなく対人でチャット出来るページのURLを調べてくれた。どうやって調べたんだろう、サポートページには無かったのに。
早速URLからチャットのページへ。しかしこれがまた大変だった。有人チャットでは客一人に割ける時間が限られているので、1分以内に担当の人からのメッセージに返信しなければ、チャット自体が終了してしまうとのことだった。1分って。
スマホで急いで事の顛末を説明する。己の小さな打ち間違いにもイライラしながらもチャットを進めていき、12月9日からどこかのタイミングで1度電話をもらえることになった!今度はオイラのお客様情報を箇条書きで入力するよう求められる。スマホで名前を打ち、改行のボタンを押す。名前だけが送信される。このチャットはスマホでの箇条書きに対応してないじゃんね!!!ひーひー言いながら情報を入力し、やり取りを終えた。
おやつに買っておいたフィナンシェを齧る。封を切って置いといたので、乾いてしまっていた。
12月9日
昨日のことが不安で眠れず、スマホで音楽を流しながら寝てしまっていた。そのせいで、スマホの電源は切れていた。時刻は10時。今日からカード会社の電話を待つ日々が始まるのか…と気分がどんよりした。
昼になっても電話はかかってこない。そりゃそうだ、12月9日「から」と書いてあったのだから、もしかしたら10日に電話がかかってくるかもしれないんだから。しかしここでオイラは嫌なことを考えてしまった。「もしスマホの電源が切れていたタイミングで、カード会社から電話がかかってきていたらどうしよう」と。その場合オイラが電話に出なかったわけだから、もうあちらが電話をかけてくる可能性は……
そんなことを考えたものだから、もう落ち着かない。眼の前にある大きなタスクが片付かないので、何をやっても上の空で、自分を責めながら家事をしていた。
オイラは杞憂から生まれてきたような人間だ。どんな小さいことでも、とても不安に感じる。もし、もうカード会社から電話がかかってこなかったら、それがオイラのせいだったら、そもそもオイラは三井住友の口座に振り込めたの?振り込んだのは詐欺グループへの銀行で、本当はカード会社には振り込めてすらいないんじゃないの?それを確かめるには電話を待たなきゃいけないけど電話がかかってこない……オイラはなんて愚かなんだ……こんなことなら気を利かせて直接振り込みなんて……と、どんどん落ち込んでいき、家の中なのにしゃがみこんでしまった。
数時間後、友人に電話がかかってこないことを伝えると「直接電話するといい」と言って、自動オペレーターによる電話応対の番号を教えてくれた。え!?なんでそれを知ってるの?サポートページには載ってなかったのに。すぐ電話することにした。
自動音声でのやり取りが始まった。指示に従いボタンを押して困りごとを絞っていく。やっていることはチャットと同じだが、しかしチャットよりもかなりスムーズに感じた。1分という時間制限が無かったからかもしれない。最終的にはオペレーターに繋いでくれることになった!が、今その方は手が離せない状態にあるそうで、明日あちらから電話をかけてくれるところまでたどり着いた。明日の電話の予約時刻は午前9時から10時。
スマホが電源ケーブルに刺さっていることを、寝る前に3度確認し、予備で目覚まし時計をかけて寝た。やはり不安であまり眠れなかった。
12月10日
8時50分に起きた。普段ならこの時間に起きてしまうと寝不足になってしまうが、構うもんかと電話を待つ。いつかかってくるか分からない、しかし必ずかかってくる電話を待つのは緊張する。昨日と同じようなことを考えてしまうので、とりあえずスマホを持って外に出た。
外でコーヒーを飲んでいると、着信。三井住友カードから!一度深呼吸をしてから出る。はい、実は相談したいことがありまして……はい、よろしくお願いします。
しばし待つ。
…はっはい、なるほど、でははい、お待ちしてます、よろしくお願いします、それでは失礼します。
別の部署?担当?の人に電話を繋ぎたかったようだが、その方がお忙しいようで、今日中にその方から電話をかけ直すとのことだった。また待つのか!とも思ったが、8日の気分とは比べ物にならないほどスッキリしている。だってコトが少し進んだから。
家に帰ってきて、掃除をしているとまた着信。はい、そうです、あ、あっあ~そうでしたか、はい、はい。あ~良かったです、はい、いえとんでもないです、はい、ありがとうございました、失礼します~。
やはり2重支払いになっていた!お金は12月12日に返って来るとのこと!やったー!いや、やったーではないんだが、でもやったー!
とっても安心した。まずオイラが正しくカード会社に振り込んでいたことに安心した。だって詐欺グループの口座にうっかり振り込んでたかもしれないからね。そしてお金がそのまま戻ってくることも安心した。普段のクレカの支払いの2倍位の金額のお金が、急に手元からなくなったら悲しいぞ。それが戻って来る(正しく引き落とされているからクレカ代は払ってはいる)。ほあ~。
この日は夜遅くまで仕事だったはずなんだが、どんな仕事だったかまったく思い出せない。お金が戻ってきてよかったなーということしか考えてなかった。
12月12日
今年の漢字は「金」だそうだ。漢字が決まったその日、オイラの口座にも12万3725円という大金が戻ってきた。いえ~い。今年の漢字は金で文句ありません。金が何よりも大切です。
オイラは本当に余計なことをしてしまった。しかもカードと紐づけてない別銀行の口座から振り込んでしまうというミスまで冒した。そもそも25日の引き落とし失敗に気付いていないところから、今回の悲劇が始まっている。
心配性は石橋を叩いて渡るのでミスをしない、危険察知能力が高いと言われるが、そうではない人間もいる。うっかり者である私のような。
結局お金が戻ってきただけなので、得なんてものは一切していない。ただ数日オロオロして、悲しい気持ちになった。それだけである。
今回の出来事から何か、無理矢理にでも良かった点をひねり出せればいいが、なにもないのであった。それでも戻ってきたお金をコンビニのATMで確認し、外でケーキを食べたのは、何もなくて良かったことへのお祝いのつもりだった。

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