朝から家で作業をしていた。
日課の散歩に行くのを忘れており、足がそわそわし始めたのが13時頃。しかしこの日の天気は大雨、ときどき曇り。台風14号が九州辺りに上陸した時、こちらの天気もほどほどに荒れていた。
ふと外に目をやると、先程までの雨が上がったように思えた。少しだけ陽も差しているような。”ときどき曇り”がやってきたか!これは好機!とばかりに、水筒をショルダーバッグに突っ込んだ。ブロッコリー柄のアロハシャツを羽織って大体の準備は完了。勢いよく外へ飛び出した。すぐ引き返し、ビニール傘を取ってきた。
家の近くに川がある。そこの河川敷の外側、高いところを散歩することにした(あそこに名前ってあるのか。河川敷の高いところだよ)。2つの橋を渡って、川の周りを大きくグルリと周るようなコース。川ってずっと見てると引き込まれそうになるな。だから増水している時なんかは特に見ない。自分をコントロール出来なそうで怖い。河川敷を歩くのに、川を見ないというのも無理か。
道の脇には、自分の背丈よりも高い雑草がモリモリと生えている。たしかセイバンモロコシという名だ。風にあおられながら、ヴァッサヴァッサと揺れる。穂の部分が赤く染まっていて、なんとなく秋を感じる。茎の部分に目をやると、3色ジェットストリームくらい太い。そしてしなやかだ。これでは雑草というより雑木だ。
そんな雑木たちも台風の影響でか、道の途中で大きく倒れていたりする。背が高いから意外と横からの衝撃に弱いのかもしれない。ひょっとしたら自分の体でもなぎ倒せるかも!と思い、モロコシの草むらにズンズンと入っていった。顔に茎やら葉がベシベシ当たって痛い。すぐに諦めた。アスファルトに落ちたモロコシの穂先を、雀がついばんでいた。お前たちの方が賢そうだな。
1つ目の橋を渡る途中で、急に雨が。お!?台風?!来たか…!!という気分になったが、まだ来るわけがないよな。家を出て5分しか経ってないんだもん。明後日の夜中に来るらしい。夜か。
雨が降る中を傘さして歩く。向こうから、犬の散歩連れがやってきた。秋田犬っぽい。彼は橋の段差の上、道路の縁石のような所をスタスタ歩いていた。犬もそういう所を歩きたくなるものなのか!人間だけじゃないのか!と思って少し嬉しくなった。
こんなに天気の悪い日に、なんの予定にも縛られず、傘を差して歩ける。なんと贅沢だろう。傘に当たる雨が強まったり弱まったりする。どどどっばーっどっどっざざざー…という風にせわしなく雨音が変わっていき、その度に傘の持ち手から風雨の勢いを感じる。この風雨の波に晒されるのが好きだ。
雨というのは自然現象だ。透過素材のように自分の外側のレイヤーに貼り付けられているわけではない。強弱や濃淡は秒ごとに違う。ライブ感があるというのかな。誰のライブなんだ、地球か。その当たり前を思い出せるから、風雨の波にぶつかっていくのが好き。
それに、台風が来るとなぜかワクワクする。こんな呑気なことを書けるのは、自分の家の窓ガラスが風でぶち破れたことがないからだと思う。ごめん。
でもやっぱりワクワクする。上でも少し書いたが、いつもよりも躍動感のある自然を感じられてハイになるからかもしれない。森に行くと元気出るだろ。私は出るんだが、あれと同じ感じを台風の時に味わえる気がするんだ。変かな。
滝のような雨に対し、傘もささずにぶち当たりたいわけではないぞ!あ、いや、ちょっとそういう気持ちもあるかも。どうしようもなく濡れると諦めがついてかえって気持ちが良い。そこまでビショビショにならなくても、服が濡れたら着替えればいいし、髪が濡れたら乾かせば良い。家に帰って風呂に入ればすべて解決だ。
しかし濡れたまま仕事に行ったりするのは面倒だよな。腕もしっとりしてるから書類とかくっつくし。シャツも透けて職場の人に乳首とか見られたら恥ずかしい。買ったばかりの本がしわしわに!なんてこともある。濡れること自体が嫌なのではない。「濡れ×予定」がイヤなんだ。
台風直前散歩コース中盤。草むらから野生の猫がのっそり飛び出した。耳が切れているから半分野生か。この道を通るとよく出会う。時々二人で、近くの東屋で休んだりもする。仲がいいわけでは無いんだ、お互いにそこまで近付いたりしないから。その猫は東屋のベンチに飛び乗り、座った。雨宿りか?
猫と別れ先に進むと、ついに雨雲が本気を出してきた。なるほど、さっきの猫は予感していたんだな。だから草むらよりもしっかりした、屋根のある東屋に移動したのか。やっぱり賢いな。
びしょびしょのランナーとすれ違い、2つ目の橋へさしかかる。角を曲がる時、川が目に入ったのだが、その時アッと声が出てしまった。カ、カモが流されてる!すごい水の量だ。溺れちゃうのでは…と一人橋の上でアワアワしてしまった。が、カモは平気な顔をして、ススイ~っと川岸へ寄っていった。そうか、これしきの雨なんてことないのか。
帰り際、陸でじっとしているサギも見ることが出来た。珍しい!ここのサギとはよく会うが、いつも川の中でじっとしているか、ゆーっくり魚を狙っているかでしか見たことがない。陸に上がるのか!当たり前だな。
いつも通りの生活を送っている猫やカモたちを見ると、台風に自然を感じてはしゃいでいるのが少し恥ずかしくなった。観光地ではしゃぐオノボリさんというか。でも小さい縁石に登る犬もいるくらいだし、彼らは彼らで、この大荒れの一日を楽しんでいるのかもしれない。人間が高等な生き物だと思うのも、いやいや動物のほうがすごいから人間はダメだと思うのも、どっちも他の生き物にとってはどーでもいいよな。そんなことを考えながら家に着いた。傘で手が塞がってしまったので、水筒には手を付けずに帰ってきてしまった。
