まるっとまったりまろやかに

ゲームの感想、考察、実況プレイ動画のこと。日記も。

双六を作るのをやめた

私はド田舎に住んでいたので、遊び場なんてものは無限にあった。山に川に、目につく場所全てが遊び場である。というのは嘘だ。

田舎には2種類ある。となりのトトロに出てくるような緑と青色が眩しい「濃い田舎」と、過疎化が進み面白みも何もない灰色がかった「薄い田舎」。

おらが町はうっすうすだった。道路と廃屋ばかりで公園もなければたまり場もなく、大きなドブ(セキと呼んでいる)とヤブばかり。

しかしそれでも私は満足だった。というかどうでも良かった。ゲームがあればそれで十分だったから。

物心ついた時からゲームが好きで、寝ても覚めてもそればかり。家にいると親から追い出されるので、仕方なくGBを手に外へ飛び出し、ほどほどに暗い場所を探しGB原人やドラクエモンスターズをする毎日だった。

一人遊びももちろん好きだった。マンガの主人公をパクってイジってオリジナルの主人公に仕立て上げ、頭で妄想して楽しんでいた。

周りには男友達がほとんどいなかった。クラスの友達に会うためには一山越えねばならぬほど。それなのに父親は友達と遊べという。じゃあ自動車を貸してくれと言うと殴られた。

それでも同じ地区の中には唯一、4つ上の男の子がいた。私が小2であっちが小6。その子とばかり遊んでいたように思う。ゲームも友達も、私は一つのものをずっと愛でるタイプだから。

お昼休み時間も一緒で、学校から帰る時も一緒、帰ってからも一緒。プラモデルをぶつけあったり砂利道をミニ四駆走らせてみようと試みたり。楽しかった。

 

私が小学三年生になった時、遊び相手がいなくなってしまった。彼が卒業し中学生になったためだ。春頃はまだいくらか遊んでいたはず。だんだんと彼は他の友だちと遊ぶようになった。

クラスの中でまだ仲良かった奴らも、クラス替えで消えてしまった。いや、クラスで浮いていたわけではない。楽しくお喋りし、ふざけあっていた。学校はめちゃ楽しかった。

ただただ、遊び相手がいなかった。そういう奴っていないか?学校ではたくさん話すけど遊んだことのないやつ。私だ。

2年間も同学年と遊んでいなかったために、皆がどう遊んでいるか知らなかった。その輪の中に入っていけなくなってしまったのだ。

仕方がないので休み時間には一人で図書室に行き、隅っこでゴロゴロしたり、なるべく絵が多く載っている本を読んでいた。マンガでわかることわざ辞典のおかげで、今でも多少ことわざは知っている。

閑古鳥が鳴いていたのは町内だけでなく私の頭の上でもだった。趣味が細分化されていない時代、隣人の趣味は自分の趣味になるものなのに。隣人がいないので遊べない、遊び方が分からない。これは困った。ただまぁネットもないのでやはり一人で本を読む日々が続いた。

ことわざの本も読み飽きて伝記に走り、○○のひみつシリーズに進んだ。科学のひみつが図書室には置いておらず、自分の教室にあることが分かり、オープンスペースで読んでいた。(教室の一角にあるゴロゴロ出来る場所のこと。床は柔らかい絨毯みたいなのが敷いてある)

 

TくんとOくんに出会ったのはその時だ。

多分あっちから話しかけられたんだと思う。一緒に遊ぼうと誘われて、めちゃくちゃ嬉しかった。が、僕は彼らのことをあまりよく知らなかった。

さっきも書いたが僕はクラスで浮いていたわけではない。皆の輪の中に入って喋ったりふざけ合ったりしていた。ただその輪の中――いわゆるクラスの中心的グループにはいなかったように思う。初対面くらいの感じだ。いたかキミら?

彼らは1冊の自由帳を囲んで座っていた。僕もその輪に入れてもらえた。自由帳には大きく罫線が引いてある。そこには小さな字で「〇〇と戦った」とか「△△を拾った」と書かれている。最初のページにはカッコいいキャラと数字が書かれていた。

彼らはオリジナルの双六を作って遊んでいたのだ!作るのはTくん、遊ぶのは二人でだ。もっと大勢で遊んだほうが面白いと思って、誘ってくれたんだと思う。

天才だと思った。当時スゴロクなんてものは正月やって、やれ○○して戻るだの進むだの休むだの……あまりにも平和的だ。Tくんの双六はキャラが戦い、成長していく。桃電のようなものとも違うしゲームブックでもない。ロールプレイング双六?なんて遊んだことがない。

ましてそれを作るなんて発想もないし、絵もすごく上手い。あのキャラは今考えてもカッコいいと思う。マントも着てたもんな。

 

それから僕たちはオープンスペースに集まって遊んだ。

当時の僕からするとTくんはめちゃめちゃ頭が良かった。今ちょっと見栄を張ったが、今の私からしてもめちゃくちゃ頭いいと思う。

勉強が出来るかどうかは分からないが、僕が知らないことは何でも知っていたし、ゲームも僕より沢山遊んでいた。時々やる将棋でもボコボコにされ相手にならなかった。僕よりちょっと足も速かった。

彼の愛読書は烈火の炎だった。サンデーで連載されていたはず。当時コロコロばかり読んでいた僕には大人に見えた。マンガの内容を聞かされる度にかっこ良すぎてのたうち回った。読んだことのないマンガのセリフを暗唱出来るようになった。

もちろん双六も楽しかった。あえて3マス戻らせて宿屋に行かせたり、何もないマスを何度か渡ることで限定のアイテムを貰えたり。

今考えてもスゲーと思うのは、彼が強さのインフレを気にしていたことだ。安易にキャラを成長させない。強くなっても攻撃力が1上がったりする程度。今でいうとマリオストーリーくらいのパワーバランスだったな。小3でだ。今の大人も出来ないのに。

初めて一緒に帰った時も驚いた。彼はなぜか緑色の横長のランドセルを背負っていた。当時ランドセルは黒か赤しかなかったから。背面に鍵もついていて、それがすごくカッコよかった。

 

一度だけ、彼のお家に招待されたことがある。今で言うモデルハウスのように整った室内。お茶がティーカップで出てきたことも印象的だった。小6の友達だった彼ん家では牛乳瓶が出てきたのに。

部屋で僕たちは、やはりマンガのことを話したり、絵を描いた。やることは普段どおりだった。

ゲームをしようと言ったTくんは、僕が知っているゲーム機ではなく、ノートPCを持ってきた。その時まで僕は、自宅にPCがあるやつの家に遊びにいったことはなかった。まして自分だけのノートPCを持っている小3なんてこの世に存在するとすら思っていなかった。

で、ゲームだ。彼はノートに…確かコントローラを挿して?ロックマンXを遊び始めた。どのシリーズか忘れたが多分4以降だったと思う。

僕なんて初代ロックマンXを難しくてクリアもしていないのに、彼と来たら全然知らないロックマンを遊び始めたではないか。目の前にカセットもないのに!

僕よりも足が速くて賢い友達が、知らないゲーム機(ノートPC)で知らないゲームを遊ぶ。その姿が衝撃的で、出されたポテチを一枚も食べなかった。嘘だモリモリ食べた。

嫉妬心なんてものはあまりなかった。ただなんとなく、住む世界が違うなとは幼心に感じた。

僕も両親のお陰で何不自由なく暮らしていたので、裕福さで差を感じたわけではない。文化や生活のレベルが違う。遠い星からやってきた彼の宇宙船に乗せてもらったような気持ちだった。帰った後お母さんに感想を聞かれたが、生返事をしただけだった。

 

それから少し経って、Tくんはいなくなった。彼はまた宇宙に旅立った。

転校することを僕は聞かされていなかった。たぶんOくんは知っていたのかもしれない。

ここまでOくんのことを書いていなかったが、実は当時彼とはあまり仲が良くなかった。Oくんは僕を煙たがっていた。自分の大切なTくんと仲良くしてしまうから、それが嫌だったんだろう。ついてくるなと言われたこともあるが、Tくんは僕を誘ってくれた。

Tくんという「場所」がなくなってしまったので、僕はOくんとは遊ばなくなった。また一人になった。そして図書室に通うことに……ならなかった。

僕もTくんと同じように、双六を作りたい!と思い、休み時間に教室で絵を描きまくっていた。まぁ遊ばせる相手はいなかったのだが。でも良いと思った。こんなに面白い双六なんだから、誰も遊びたいに決まっている。Tくんの双六はすごいんだ。

途中まで完成したそれを持って、教室内のグループに突撃し、それを遊ばせようとした。しかしアッサリ断られた。その代わりに、ドッヂボールで遊ぼうと誘われた。もちろん参加した。

小学4年の終わり頃のことだったか。僕はまた誰かと遊ぶことが出来た。そして双六を作るのをやめた。

 

今から10年以上前の話だ。

Tくんは何をしているんだろうか……フルネームを覚えているので(名前の漢字までカッコいいからな)、今検索をしたら出てくるかもしれない。

でもやめる。私、いや僕の中ではTくんはあのままだし、それでいい。私は変わってしまったし、彼も絶対変わってしまっただろうけど。

僕は烈火の炎もゲームも双六も好きだぞ。Tくんは今でも好きかな。

 

ここまで書いておいてなんだが、今週のお題の「今週」が終わってるじゃないか……周りから取り残されるのも昔から変わらないな。

今週のお題「何して遊んだ?」